岩 戸(いわと)
■ 登場人物
天照大御神(あまてらすおおみかみ)、天児屋命(あまのこやねのみこと)、太玉命(ふとだまのみこと)、天宇津女命(あめのうずめのみこと)、手力男命(たぢからおのみこと)
■ 神楽歌
天の戸の開いて月の夜もすがら
静かに拝む天の岩戸を
静かに拝む天の岩戸を
■ あらすじ
天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、弟・須佐之男命(すさのおのみこと)の乱暴に困り天の岩戸の中にお隠れになったので、世の中すべてが闇夜(とこやみ)となりました。そこで神々は集まって相談し、宇津女命を呼んで躍らせ、長鳴鳥(ながなきどり)を鳴かせ、不思議に思った大御神が岩戸を少し開けたところを力持ちの手力男命(たぢからおのみこと)が岩戸を開き迎え出し、再び世の中が明るくなり禍も無くなり平和が戻りました。天宇津女命の岩戸の前での舞いが神楽の起源であるといわれ、石見神楽の中でも特に神聖な演目とされています。
4人の神様達が色々と考えて天照大御神を岩戸から導き出す神楽。神々と一緒の気持ちになって天照大御神が現れたら一緒に喜んで、お日様に感謝をしよう♪ お祭りの起源となる演目だよ。
■ 口 上〈校訂石見神楽台本より〉
兒屋根「自らは天照大御神に仕へまつる天の兒屋根の命なり。この程皇大御神の御弟須佐之男の命、種々の悪しき業をなしたまへば、皇大御神はいたく御怒りまして、天の岩戸をさして閉ぢ籠らせ給へば、高天の原皆暗く、天の下ことごとに暗し。これによりて諸々の事皆火を点して辨ふるより外はなし。荒ぶる神の音なひさ蠅なし皆沸き、万づの禍ことごとに起りて、いかにともすべき様もなし。悲しきかなや、いかにせん。この處に天の太玉の命はおはしまさずや。いかに太玉の命、急ぎ御出なされ候へ。」
太玉「自らを召られ候は、天の兒屋根にましますや。こは又何條何事にて候や。」
兒屋根「汝命も知ろしめく如く、御弟須佐之男の命の悪しき仕業によりて皇大御神は天の岩戸をさして閉ぢ籠らせたまふ。故高皇彦霊の神の御言もちて、皇大御神を招ぎまつるべしと宣りたまふ。汝命も共に招ぎまつる業を、神謀りに謀りたまふべく候。」
太玉「命仰せの如く皇大御神の御光なきによりて、世の中常闇となりぬこれによりて八百万の神たち共に憂へ迷ひて、この安の川原に神集ひに集ひてあれば、汝命深く遠く思ひ謀りて、しかじかせよと仰せ給はば各々その業にいそしみ仕へまつらん。そのをちをちを御諭しなさるべく候。」
兒屋根「さあらば天の金山の眞金を取りて、石凝姥の命に仰せて、日の御形の鏡を作らしめ、天の目一箇の命に仰せて、太刀、斧、またさなぎを作らしめ、天の日鷲の命に仰せて、白幣を作らしめ、天の長白羽の命に仰せて、靑幣を作らしめ、天の櫛明玉の命に仰せて、八尺の曲玉の五百箇の御統の玉を作らしめ、又天の香具山の五百枝真榊を根こじにこじて、彼の神々の作らせる種々の物を、上つ枝中つ枝下づ枝に取りかけて、汝命太御幣帛と捧げ待ちたまへ。我は太祝詞言をもてねぎ申し、神ほさぎにほさがばやと存じ候が、こは如何あるべく候や。」
太玉「こは奇しく妙に謀らせたまふものかな。御言のまにまに神たちに仰せて仕へまつらしめん。又手置帆負の命、彦狹知の命に仰せて新宮を作らしめ、天の棚機姫の命に仰せて、神御衣を織らせ申すべく候が、こは如何あるべく候や。」
兒屋根「さらば天の岩戸の御前にと急ぎ申すべく候。」
兒屋根「急ぎ候ほどに天の岩戸の御前に参る来て候へば、この處に燎火を焚き上げ、常夜の長鳴鳥を集へて時を作らしめ、天の手力男の命を岩戸の戸脇に隠し立たせおき、天の宇津女の命に仰せて、神遊びを仕へまつらしめん。汝命天の宇津女の命をこの處に御召しなさるべく候。」
大玉「畏まつて候。天の宇津女の命、急ぎこの齋庭に御出なさるべく候。」
宇津女「自らを召され候は、いかなる詔にて候や。」
兒屋根「汝命も知ろし召す如く、御弟須佐之男の命の悪しき仕業によりて、皇大御神は天の岩戸をさして閉ぢ籠らせたまへば、かくの如く常闇となりぬ。これによりて我ら二柱は、皇大御神を招ぎまつるべき業を設けそなへて候ほどに、汝命は御神楽の長となりて、神遊び仕へまつりたまふべく候。」
宇津女「さあらば天の香具山の日かげのかづらを襷にかけ、天の香具山の笹葉を手草に結ひ、手になさぎ着けたる矛を持ち、うけ伏せて踏みとどろこし一二三四五六七八九十百千万と歌ひつつ、神遊び仕へまつらん。大御神たちもともに御はやしなさるべく候。」
兒屋根「かく種々の御業仕へまつりて候へば、やや御心も和ぎて候ほどに、我ら二柱は日に御綱をかえめぐらして、皇大御神を新宮に遷しまつらん。天の手力男の命は御門を守りたまへ。天の宇津女の命は大御前に仕へ侍ひまたふべく候。」
鈴神楽 塩祓 真榊 帯舞 神迎 八幡 神祇太鼓 かっ鼓 切目 道がえし 四神 四剣 鹿島 天蓋 塵輪 八十神 天神 黒塚 鍾馗 日本武尊 岩戸 恵比須 大蛇 五穀種元 頼政 八衢 熊襲 五神