石見神楽(いわみかぐら)−島根県浜田市 石見之國伝統芸能−石見神楽公式サイト−

五穀種元

能 舞

五穀種元 / 杵(ごこくたねもと/きね)

登場人物
天熊大人(あめくまのうし)、村君(むらぎみ)、人民(おおみたから)、神禰宜(かんねぎ)、お婆さん
神楽歌
種つものまき植えそめて万代の 
御種となさん今日の業かも
あらすじ
天熊大人(あめくまのうし)が、天より下った五穀の種を授かり、天の村君に作り方を教え、村君はこれを人民に伝えます。村君たちは荒野を耕し種を植え、収穫し、神禰宜(かんねぎ)を呼び火切臼(ひっきりうす)と火切杵(ひっきりきね)を借りて餅をつき、新嘗祭(にいなめさい)を行うという神楽で、農業の起りを説き、五穀豊穣を祈念しようとするもので、餅つきの場面があることから別名「杵(きね)」とも言います。
見どころ見どころ
村君と人民とで、田畑を耕しながら、面白おかしくストーリーが進んでいくよ。
田畑を耕し、餅つきをして、お祭りをして、最後に餅まきがある、農業の起こりを伝える演目なんだっ。

口 上
天熊「自らは天照大御神に仕へ奉る天熊の大人といへる神なり。ここに天照大御神の御言以ちて、この豊葦原の瑞穂の国に保食の神といふ神ありと聞こし召したまひ、御弟須佐之男の命を遣はして見しめたまふ。故須佐之男の命、その御御言を畏こみまして、保食の神の御許に至りたまひ、食しものを乞ひたまへば、保食の神、種々のためつものを、百取りの机につくり供へて奉りたまふ。時に須佐之男の命、その御仕業を覗ひ、怒り面火照りして、汚きものをもて我に養ふぞと宣りたまひ、即ち保食の神を打ち殺して返り言申したまふ。時に天照大御神、重ねて自らに詔らして、保食の神の御許に至り、その御有様を伺はしめたまふに、保食の神まことに既に御まかりたまひ、その御体に生れる種々の種つもの、又蠶、桑の木、牛馬に至るまで、悉く取り持ちて、天照大御神に捧げまつりしかば、大御神いたく喜びまして、この物どもは顯しき靑人草の、朝夕に食いて生くべきものぞと宣り給ひ、即ち粟、稗、麥、豆を畑つ物と定め、稲を御田つものと定めたまひて、天の村君をして天の狭田長田に植え廣めさせとよとの詔を受け、只今村君が許にと罷りて、大御言を伝へばやと存じ候。」
天熊「急ぎ候ほどに天の村君が許に着きて候。いかに天の村君、御出で候へ。」
村君「自らを召され候は、いかなる詔にて候や。」
天熊「自らは天照大御神に仕へ奉る天熊の大人といへる神なり。ここに大御神の御言もちて、汝天の村君に、この種々の種つ物、又斎鋤斎鍬を授けて、田畑を開かしめ、この種つ物を植へ廣めさせとよの大御言なり。汝この斎鋤斎鍬を持ち候へ。」
村君「畏まつて候。」
天熊「其の斎鋤斎鍬を持ちて狭田長田を開き、この種々の種つ物を植へ廣め候へ。」
村君「こは有難き詔にて候。然らば人民を率いて牛馬を以て力を助けしめ、斎鋤斎鍬をもて、水ある處を田となして稲を植え、水なき處を畑となして麥、粟、稗、豆を播き植え、又天の香具山に桑を植えて蠶を飼はしめ、事終へて後、重ねて注進仕るべく候。」
天熊「然らばこの由奏聞に及ぶべく候。」
村君「人民に物申さん。」
人民「人民を召され候は天の村君におはしたまふや。如何なる仰せ言にて候や。」
村君「ここに天照大御神の御言以ちて、天熊の大人より、この種々の種つもの、及び斎鋤斎鍬、牛馬桑蠶に至るまで、悉く授けたまひ、このものを處々に植え廣めよとの詔なり。汝いそしみ候へ。」
人民「畏まつて候。」
村君「然らばこの斎鋤斎鍬を以て、荒れ野を開き、水の便ある處には溝を構へ、こを包むに畦を作り、水田となして稲を植え、水なき處を畑となし、粟稗麥豆を播き植え、草ぎり田がへし、水旱を計りて作りたて、これを取り入るる時は牛馬を以て運ばしめ、又天の香具山に桑を植え、女の業として蠶を飼はしめ、人民たるの本分を盡し、勤めて私することなく、早くいそしみ候へ。」
人民「げに大御神の詔といひ、朝夕食ひて命をつなぐべき種々の種つ物を植え廣むることに候へば、力の及ぶ限り心の届く極み、いそしみ仕へまつるべく候。」
村君「汝たちのいそしみつる力によりて、狭田長田も開きととのひてあれば、いで種つ物を植え廣めばやと存じ候。」
村君「共に力を盡し、耕へし草ぎりいそしみつるしるしによりて、秋の垂り穂八束穂に撓ひ茂り、いとよく實のりてあれば、何とぞこのよしを天熊の大人の命に申し上げ奉らばやと存じ候。然れば新嘗祭仕へまつりたまふべく候へば、杵を用いたまふ事あるべし。いで杵の用意仕り候へ。」
村君「あなたの方には、御先祖櫛八玉の神様から伝はつた日きり臼に火きり杵があるさうなが、あれを貸してやんなはれ。」





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