石見神楽(いわみかぐら)−島根県浜田市 石見之國伝統芸能−石見神楽公式サイト−

日本武尊

能 舞

日本武尊 (やまとたけるのみこと)

登場人物
日本武尊(やまとたけるのみこと)、吉備武彦(きびのたけひこ)、兄ぎし、弟ぎし、賊首(ひとこのかみ)
神楽歌
西の国ことむけ終えて東へ 
また出で立たす皇子ぞかしこき
あらすじ
父、 景行天皇の命令で東の国を平定する事になった日本武尊は、伊勢の宮にて大和姫より村雲の宝剣を賜り東へ向かいます。 駿河の国の兄ぎし・弟ぎしたちは征伐されまいと、 賊首から策を授かり日本武尊を焼き殺そうと謀りますが、 尊の宝剣がすり抜け、草をなぎ払い火を起こします。 迎え火により難を逃れた尊は兄ぎし・弟ぎしら軍勢の征伐に成功します。このとき、尊は村雲の宝剣を「草薙剣」と改め、三種の神器の一つが生まれました。
見どころ見どころ
厳つい顔をした兄ぎし・弟ぎしが出てくるけど、とってもユーモラスな2人で、賊首とのやりとりは、笑わずにはいれないよ♪
決戦シーンは火や煙が立ち上り、この演目ならではの光景が見れちゃう!

口 上
「纏向の日代の宮に天の下知ろしめす、大足彦忍代別天皇の二柱の皇子、日本武の尊なり。今度東の国々安からず、荒ぶる神さはに起り、えみしことどとに背きて人民を掠む。故その乱れを向けしめんと、自らに宣りたまはく東のえみしども荒く強し。国に君なく村に長なし。境を貪りて共に相掠む。又山に悪しき神あり。野に姦しき鬼ありて、衢をさへぎり道を塞ぎて人を苦しましむ。又東のえみしの中、えぞ最も強し。男女交じり居て、父子別なく、冬は穴に寝ね、夏は巣に住み、毛を衣とし、山に登ること飛ぶ鳥の如く、草を走ること獣の如し。恩を受けては即ち忘れ、仇を見ては必ず報ゆ。ここを以て、矢をたぶさに納め、太刀を衣の中に隠し、あるはともがらを集めて邊を侵し、あるはなりはひの時を覗ひて人民を掠む。討てば即ち山に入り、追えば即ち草に隠る。故昔よりこの方、御おもむけに従はず。今我汝の人となりを見る。願はくは深く計り遠く思ひはかりて、かたましきを探り、邊を伺ひて、これに示すに勢を以てし。これを懐くるに徳を以てし、兵を煩はさずして自ら従はしめよ。即ち言葉を巧みにして荒ぶる神を従へ、猛きを振ひて以てかたましきを拂へと、父の命の大御言を蒙りてあれば、吉備の武彦、大伴の武日の連らを率いて、只今かの地に赴かばやと存じ候。」
神二「これは有難き詔にて候。この度東の国々を荒ぶる者を、そのまま差しおきたまはば、終に大命に従ふことなかるべし。何とぞ命の御勢を以て御退治遊ばれたく、自らも御供仕えるべく候。」
「急ぎ候ほどに、早くも伊勢の国に着きて候へば、皇大御神の大宮に詣でて、夷狄の降伏を祈り、又伯母君大和姫の命にも御暇申し上げ奉らんと存じ候。吉備の武彦の命、斎宮に案内仕り候。」
〈中略〉
内より「汝は歳未だ若くおはしたまふに、かく遥けき国の仇どもを、ことむけたまはんため出でましたまふ御いたつきのほど、推し量り申すなり。我この大宮に仕ふること幸ひなれ。大宮に納まれる天の村雲の御太刀を申し受けて、授け参らするなり。天つ日嗣の御しるしたるこの御剣を戴き持ちて、出でましたまひなば、国々の荒ぶるもの、又まつろはぬ人どもを拂ひ平げたまはんこと、何より以て易かるべく候。いでこの御太刀を参らするなり。」
「こは有難き詔にて候。あはれ貴きこの御剣を賜はる上は、たやすく仇どもを討ち平げて、返り言申すべく候。」
内より「又その御太刀に附けたる守袋は、必ず常に開きたまふことなかれ。若くも御命の危く思し召したまふ時しもあれば、その時こそ解き開きまして、御神徳を蒙りたまへ。ゆめゆめ怠りたまふことなく、事終へて後、歸り来まさん日を待ち申すべく候。」
「かく種々の珍寶を賜はる上は、たやすく仇どもを拂い平げ、国々をことむけ、返り言申すべく候。」
「あら嬉しあら喜ばしこれぞこの仇を討つべき御剣の太刀」
兄ぎし「弟ぎし早く早く。」
弟ぎし「弟ぎし早く早くと呼びたまふは、又何條何事ぞや。」
兄ぎし「我らどもは幼きを助けず、老いたるを敬はず、弱きを虐げ、強きを凌ぎ、思ひのままに傲りてあるを、天朝の憎ませたまひ、殊には朝使いに逆ひ貢物を奉らざるを怒りたまひて、我らどもを討ち平げたまふとの事故、弟ぎしたちにも知らしめんと存じ、呼び集へて候。」
〈中略〉
兄ぎし「我も然か思ひ候へども、なかなか彼の大軍に敵し、大将たる日本武の尊を討ち亡ぼすべき謀なければ、我らが賊首を呼んで、かの謀を承りたく候。」
〈中略〉
賊首「我もこの儀は聞き及び候へども、今度都より下りたまへる軍勢に封じ候儀、なかなか互の力を以ては敵し難し。只謀を以て大軍を追ひ散らし、日本武の尊を討ち奉る外はあらじと思ふなり。汝らいかに思ふぞや。」
弟ぎし「誠に賊首の仰せの如く、御大将を討ち候はば、官軍數多ありとも、その甲斐なかるべく候。その御大将を討ち申すべき工夫も覚えず候へば、何とぞ宜しき謀を施したまひて、我らが命を救ひたまはれかし。偏へに願ひ奉り候。」
賊首「我ここによき謀こそ候へ、この駿河の国は、かしこに大野あり。彼の野に大鹿あつて、折々荒び出で人を害ひ候故、田畑も作り難し。それ故徒らに月日を送り、朝使に逆ひ、地租を奉らざるも、己むを得ざることに候へば、何とぞかの荒ぶる大鹿を平げて、万民に生業をなさしめ、地租を奉るようになさしめたまへかし、と偽りて、ひたすらに願ひなば、日本武の尊もよも偽りとは知らずして、かの大鹿を平げんと、日本武の尊を始めとし、大軍もろともに大野に分け入り、狩りをしたまふべし。この時我ら八方より火をかけ候はば、大軍は火煙に包まれ、何れをさして出でん方もなく、煙にむせび焔に焦げ、焼けうせなんとこそ存じ候へ。この謀は汝らがいかが思ふぞや。」
兄弟「こは誠に驚き入つたる御謀を承ることにて候。いかにもいかにもかく計り申さば、猛く雄々しき日本武の尊を始め、都方の軍勢残らず萱や茨の生い茂れる大野の中に焼けうせたまふべく候へば、後又都より打手の官軍も来るまじく候。さればこれに增したる御謀を候まじ。何とぞ宜しく指図したまへ。偏へに御盡力を仰ぎ奉り候。」
賊首「然らば我はこれより宿に歸りて、万づの周旋いたすべし。若しも軍勢の入りこみあらば、諸事ぬかりなく取り計らひ、大野をさして導き候へ。」
兄弟「畏まつて候。」
兄弟「それに御出は日本武の尊におはしたまふや。この野に大鹿甚多あり。息は朝霧の如く、足は茂林の如し。田畑を荒し、生業を妨げ、万民これがため草ぎり耕へし物作ること能はず、貢物を奉ることもまた難し。何とぞ彼の荒ぶる大鹿を平げて、我らどもに田畑を作らしめ、地租を奉るようになしたまへかし。偏へに願ひ奉り候。」
「汝ら願ひ事尤もなり。急ぎ勢子の用意をいたすべし。」
「やあやあ、汝ら我をたばかり、この大野に追い入れ、八方より火をかけて、數多の軍勢焼き亡ぼさんとせしに、叢雲の寶剣おのづから抜け出でて、草を薙ぎ拂ひつるまにまに、又守り袋の紐を解きて火打を得たれば、迎火をつけて逃れ出でたり。汝ら一々逃しはやらじ。」





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